・・・データベースおしながき・・・


ウェッジウッド バックスタンプ NEW!!
20世紀以降のボーンチャイナ製品のバックスタンプリスト


ウェッジウッド シェイプリスト
WW社創成期〜現代製品までのマニアックなリスト


デザイナー達のウェッジウッド
第二次大戦後〜現代のデザイナーと作品


ウェッジウッド・トリヴィア New!!
ゴミ知識、または、豆知識。ミニコラム。


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20世紀〜現行品までのバックスタンプのリスト
順番は年代の早い順。

1900年から使われていたバックスタンプ。
当初はポートランドの壷と「WEDGWOOD」のみだった。
ちなみにこの「ポートランドの壷」がバックスタンプに使われるようになったのは1878年以降。
壷の下に「ENGLAND」と記されるようになったのは1891年が最初で、「MADE IN ENGLAND」が記されるようになったのは1910年以降。
同時期に「BONE CHINA」の刻印も記されるようになった。
上のマークに「BONE CHINA」が加えられたスタンプ。
Wとは1879年以降のボーンチャイナ製品にあてられた製造番号で、Hというのは1928年以降に作られたハンドペイント製品を表す。
(カップ:パピルス ブルー&シルバー)
1902年以降に使われたバックスタンプ。
↑のマークとの差異は「BONE CHINA」「MADE IN ENGLAND」が必ずセットで描かれるようになった。
(ソーサー:リッチフィールド)
1929年からほんの一時期だけ使われていたマーク。
いつ頃まで使われていたのか詳細なデータが一切なく、流通量は少ないと考えられる。
(カップ:Sheerness)
ちなみにW1770のWとは1879年以降のボーンチャイナ製品にあてられた製造番号。
レジャフィックス印刷機という機械でプリントした
1950−1962年の間に製造された
ボーンチャイナ製品のバックスタンプ。
1962年以降使われるようになったバックスタンプ。
壷は黒、下の文字刻印は金。
1973−1980年に使われたバックスタンプ。
商標登録のRマークがつけられたのは1973年以降。
壷は黒、文字は金。
1980−1991年に使われたバックスタンプ。
壷は黒、文字はセピア色。
パターン名とのパーテーション部分の横線がストレートになっている。

まゆみさんより写真資料の提供を頂きました。ありがとうございました。)
1991−1997年に使われたバックスタンプ。
壷は黒、文字はセピア色。
上のバックスタンプとの差異は、
一番下の線の中央に点があるかないか。
ウェッジウッド社創立者、ジョサイア・ウェッジウッドの
没後200年記念年限定のバックスタンプ。
一番上に書かれている「Bicentenary」とは「200年」の意味。
(ソーサー:コーヌコピア)
1997年の11月生産分から使われている現行のマーク。
Wの中央にポートランドの壷は健在。
1997年〜1998年限定のマーク。
英国ウェッジウッド本社に調査依頼をしたところ、
『ジョサイア・ウェッジウッドの記念バックスタンプとして製造された』という回答を得たが、何の記念かはいまだ調査中。
現行のマークが1997年11月〜なので、このマークも並行で製造されていたのか、それとも1998年から現行のマークに移行したのか詳細も不明。
ただ1年間限定で生産されたとしか回答を得られなかった。

ガーデンドラゴンさんより情報・写真資料の提供を頂きました。ありがとうございました。)

2000年生産分限定のマーク。
Wにポートランドの壷だが、色は青、上下対称のデザイン。

まゆみさんより写真資料の提供を頂きました。ありがとうございました。)
クィーンズウェア製品のバックスタンプ、
1940年から使われている。

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()内は現在のカタログに載っている現行品、または廃盤品のシリーズ名

129
フラットな球根型のポットとジャグ。18世紀に完成したと言われているが、実際は1820年。
現在のトラディショナルシェイプの基礎となったこのシェイプ、中でもコーヒーポットは元来背の高いティーポットとしてデザインされたもの。
146 写真
(アムハースト、グィネヴィア、マーカサイト、セレスティアル・プラチナ、クリオ、コーヌコピア、インディア、ロココ…)
今日ウェッジウッドのボーンチャイナ製品を代表するシェイプ。
丸くぽってりとした形のティーポットミルクジャグ小さな耳のついたシュガーポット、日本のウェッジウッド市場においては流通の核をなすシェイプといっても過言ではない。
これも元は18世紀のデザインだと言われているが、現在ではクィーンズウェアが1828年に発売されたという記録しか残っておらず、それを裏付ける資料は残っていない。
1920年よりボーンチャイナ製品として発売されてから、トラディショナルシェイプ(コーヒーセットは当初129シェイプ、1935年以降はグローブシェイプ)の中に組み込まれている。
225(ソーラー)
ウェッジウッド創立225周年を記念してボーンチャイナとバサルト製品としてデザインされたシェイプ。
4種類、19個のアイテムが3年にわたって発表された。
Annular
1932年にデザインされたクィーンズウェア。色のバリエーションが多く、光沢のないマットな素地が特徴。基本的には無地だが、一度焼成をした後に手書きの絵を入れた製品もある。
Audley(ルビー・トンキン)
1920年にデザインされた、貝殻状のへりのある形。1930年代に、プラチナ彩とハンドペインティングのパターンに使われた。その後ルビートンキン、その他トンキンシリーズに転用されている。
Barlaston(初期スージー・クーパー?調査中)
1955にノーマン・ウィルソンによってデザインされた、細いリム(縁)つきのシェイプ。パターンはリトグラフ印刷。その後20年はトラディショナルシェイプとして発売していた。
Beaded Edge
ウェッジウッド初期のシェイプの一つで、『1802年のデザイン帳』に記載されている。1785年に製造されたと記されているが、現品がほとんど残存していないため厳密な製作年代ははっきりしていない。
Boston
クィーンズウェア、ボーンチャイナ製品のためにデザインされた小さな円柱状のコーヒーカップと同じ形のボール、涙型のジャグ。(以上の記載しかありません。現在調査中)
Bute(ジャスパー兼用カップ) 写真
高さのない丸い形のティーカップ、またはクィーンズウェア、ボーンチャイナ製品のモーニングカップとして作られた。現行品ではジャスパーウェアの兼用カップがこの形をとっている。
Catherine(アボカド、シーズンス)
フロッグ・サービスのために1773年にデザインされたシェイプ。ロイヤルシェイプとは異なる。
Colonial
月桂樹の葉がデザインされた縁を持つクィーンズウェア。「植民地」の意味を持つ単語コロニアル、「典型的な開拓時代(植民地時代)のアメリカンスタイル…」と呼ばれた。
Commonwealth
1947年にウェッジウッド社のデザインスタッフが、輸出用の装飾食器類・国内販売用の食器双方のニーズを満たし、かつ大規模な生産性を兼ね備えた食器として開発製品化したもの。経済性、実用性を重視した。
Concave
ウェッジウッド社初期デザインの一つ。足も金彩もなく、フラットで実用的な形。『1802年のデザイン帳』に記載されているが、1770年ごろから長い時間製造されていたと思われる。
Corinthian(イヴンロード、ハンプトンコート)
創業者ジョサイアから数えて5代目のkennard WedgwoodとVictor Skellernのコラボレーションデザイン。エンボスのリムが入ったクィーンズウェア。
Coupe/Savoy
1939年にサヴォイ・ホテル用にデザインされたが、1954年まで製品化されなかったボーンチャイナ。リムのない平らなデザインの皿、pear shapeをさらに変形させた(底にわずかにふくらみを持つ円筒型)C/S、オーバル型のティーポットを総称してCoupe shapeという。
Edme(メドウ)
1908年にデザインされたクィーンズウェアで、ウェッジウッドを代表するシェイプの一つ。アメリカで爆発的な人気を得たシェイプで、二度の世界大戦中も中断されることなく生産され続けている。
Egyptian
中央に帯状の模様を持つ紅茶・珈琲兼用ポット、ジャグ、シュガー、素地はロッソ・アンティコなどのストーンウェア。名前の通りエジプトのスフィンクスやクロコダイルのデフォルメされたモチーフがデザインされている。後にクィーンズウェア版も製造された。
Feather Edge
ウェッジウッドの初期クィーンズウェアシェイプの一つ。同じスタッフォードシャー地方のチェルシー窯に存在した「フェザー・エッジ」スタイルを模倣したデザイン。チェルシーと同様に縁に24の羽を持つ。羽にはそれぞれ7枚の羽が刻まれており、うち3枚と4枚に分けられる。1770年には既に製造されていたが、デザインされたのはそれより5年前(確かな記録はない)。ニューフェザーエッジは、縁がもっとデフォルメされた形で12枚の羽(それぞれに3枚4セットずつの羽)になっており、こちらはウェッジウッドが1772年にベントレーに送った手紙の中に記述がある。
Galaxie
1963年に作られた、セミ・フルーティッドシェイプのボーンチャイナ。
(補足:フルーティッドシェイプとは簡単に言うと縦縞デザイン、ナイト&デイのヘリンボーンではないシリーズを参照されたい。)
Globe
(アムハースト、グィネヴィア、マーカサイト、セレスティアル・プラチナ、クリオ、コーヌコピア、インディア、ロココ…)
現在のトラディショナルシェイプのコーヒーセット。ポット、シュガー、クリーマーとも足つきで背の高いデザイン。元々は1880年にデザインされたもので、1950年からにマイナーチェンジをして再販された。初期のデザインは現在の逆涙型と比べてふくらみの位置が低く、どんぐりのような形をしている。
Leigh 写真
1910年にデザインされ、1950年から再販された足つき卵型のティーカップ。その後ノーマン・ウィルソンによってティーポット、クリームジャグ、シュガーボックスなどがデザインされた。
Lincoln
20世紀のウェッジウッド製品のスタンダードとなったプレートのシェイプ。幅の広い平らな縁、縁と中心部にほとんど段差がなく、フラットなスタイル。(補足:現行品のプレートはこのシェイプかと思われる。訳者推測)
London
ウェッジウッド創立期に作られたティーカップ・コーヒーカップのシェイプ。職人によって若干デザインに差異があった。1878年に再販されている。
New Feather Edge
フェザー・エッジ参照。
Octagon
『1802年のデザイン帳』に記載があるが、1775年にデザインされたと推測されるシェイプ。名前の通り、8角形でフラットなクィーンズウェア。
Olympic
1964年にデザインされた、積み重ねて収納できるように考えられた多機能・多目的・実用的なシェイプ。
Osier
1906年にデザインされた網目模様の縁のあるのクィーンズウェア。
Paris
1906年にデザインされた、平らな縁のある(concaveよりやや広め、と記載されている)シェイプ。
Pear
「洋梨」という名前の通り、逆洋梨型のカップ。最近の製品では、エンボスクィーンズウェアがこのシェイプ。
Peony 写真
19世紀後期から、当初アメリカ市場限定で作られたボーンチャイナ。現行品の核、足つきのティーカップ。
Queen's(ウィリアムバーグズリボン、グリーン・リーフ、マンダリン)
古いストーンウェアのシェイプ(saltgrazed-stoneware)をデフォルメした6角形で直線が一切ない、曲線が柔らかなシェイプ。クィーンズウェアはシャーロット王妃のために製作されたことから命名されたと一般的に言われているが、いくつかの記録には1765年の2月には既に製品そのものは完成していたとあり、単にエピソードから命名されただけであろう。
Royal
Queen's shape(前項目)と縁のラインを除くほとんどが同じシェイプ。一説には1770年に国王ジョージ三世のためにデザインされたもの。
Satsuma
日本の伊万里、柿右衛門などがヨーロッパを席巻した「ジャポニスム」期に鉄瓶あるいは薬缶にインスピレーションを得て作られたシェイプ。形は薬缶を輪切りにして取っ手を横に付けた形で、平らな両側面に浮世絵、オリジナル、様々な絵柄を入れた。
Savoy
Coupe参照。
Shell Edge
最も古いシェイプの一つで、ロココ調のクィーンズウェア。チェルシー窯の影響も見られる。蒼の下絵にエナメル釉がかけられている。1770年代後半から80年の間に製作されたと記録されている。
Traditional
(アムハースト、グィネヴィア、マーカサイト、セレスティアル・プラチナ、クリオ、コーヌコピア、インディア、ロココ…)
いくつかのクィーンズウェアシェイプを総括し一つのシリーズアイテムと指すのがこのトラディショナル・シェイプ。当初はConcaveの皿、PearButeのティーカップ、129146のジャグ・コーヒーポット・ティーポットを指した。(補足・現行のトラディショナルシェイプは、ティーカップ(peony)コーヒーカップ(leigh)ティーセット(146)コーヒーセット(globe)プレート(Lincoin)と思われる)
Wellesley
1932年に当初アメリカ市場限定で製作されたクィーンズウェア。縁に古いデザイン帳から起用された果物と花がエンボスで描かれている。(補足・現行のウェッジウッド・ホーム、フェスティビティがこれに近いデザイン)

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名デザイナーたちが生み出してきたウェッジウッドのパターンと
それにまつわるエピソードを紹介していきます。

Victor Skellern(1909-66、WWには1934-1965在籍)
デザイナーでもあり、アートディレクターでもあったヴィクター。
第二次大戦前から戦後にかけて30年の間、ウェッジウッドの復興期を支えたスタッフの一人です。
ウェッジウッドをよく知らない人でも一度は眼にしたことのある「ワイルドストロベリー」の
元デザインといわれている「ストロベリー・ヒル」は彼の手から生み出されました。
彼の代表作といわれている作品は以下の通りです。
1935
1936




1937



1940

1941
1947


シーズンス(Seasons)
セント・ジェームズ(St.James)
ペルシャン・ポニー
(Persian pony)
モーニンググローリー
(Morning glory)
グレーフライアーズ(Greyfriars)
ハンプトン・コート
(Hampton court)
メドウ(Meadow)
ルニーミード(Runnymede)
フェアフォード(Fairford)
イヴンロード(Evenlode)
ピンパーネル(Pimpernel)
サンドリンガム(Sandringham)
1949

1951

1953
1956




1957
1959
グリーンリーフ(Green leaf)
マンダリン(Mandarin)
アシュフォード(Ashford)
サンタクララ(Santa clara)
リッチフィールド(Lichfield)
アジア(Asia)
ストロベリーヒル(Strawberry hill)
(Millicent Taplinとの合作)
(英国工業デザイン協会1956年度大賞受賞)
モゼル(Moselle)
アボガド(Avocado)

Peter Wall(WWには1951-1968在籍)
1954-66年までサブ・アートディレクター兼デザイナー、残りの2年はデザインマネージャー。
ヴィクターと同じくウェッジウッドの代表的デザインを手がけたスタッフの一人。
彼の代表作は以下の通り。
1953
1955

1956

1957
1958
1959
スターフラワー(Starflower)
ウッドバリー(Woodbury)
グリーンウッド(Greenwood)
ビーコンスフィールド(Beaconsfield)
ペンスハースト(Penshurst)
アイビーハウス(Ivy house)
ビッグトップ(Bigtop)
スプリング・モーニング(Spring morning)
Robert Minkin(WWには1955-1986在籍) 
1955-86年までWW社・バーラストン工場に在籍。
チーフデザイナー、グループ・デザインマネージャーを歴任、1979-1986まではデザインマネージャー。
ヴィクターと同じくウェッジウッドの代表的デザインを手がけたスタッフの一人。
ボーンチャイナ、クィーンズウェア製品のデザインだけでなく、ブラックバサルトのシェイプデザイン、ジャスパーウェアのEgyptian Collection(1978)も手がけた多彩なデザイナー。
彼の代表作は以下の通り。

アイスローズ(Ice Rose・クーペシェイプ)
メイフィールド(Mayfield・バーラストンシェイプとクィーンズウェア)
スターリング(Sterling)
フェイヴァーシャム(Favorsham)
シーンダー(Seander)
サンフラワー(Sun flower)
ムーンライト(Moonlight・バーラストンシェイプ)
インディア・ローズ(India Rose・ギャラクシーシェイプ)
サマーローズ(Summer Rose)
イエローダイヤモンド(Yellow Diamond)

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Trivia=(英語)くだらないこと、取るに足らないけどちょっと面白いこと
(こんなトリヴィアが聞きたい!というリクエストはこちらまで)

フロレンティーンの色展開
現行品、フロレンティーン・ターコイズが日本でも大人気のフロレンティーン・パターン。
以前はターコイズの他にもたくさんの色展開で発売されていました。その全色を紹介します。
どちらにも分類できないものに、フロレンティーンプラチナ(地がホワイト、模様はプラチナ)があります。
地のエナメル彩色のバリエーション
(模様はブラックで描かれている)
地のエナメル彩色のバリエーション
(模様はゴールド、後にシルクスクリーン印刷)
ターコイズ(現行品)、グリーン、ダークブルー、コーラル、イエロー、グレー、ホワイト(フロレンティーン・ブラック)、オレンジ ホワイト、アイボリー、ダークグリーン、グレイグリーン(テムズ・グリーン)ルビー、ダークブルー
カップに関するトリヴィア
現行品でよく目にするのは、ピオニー(紅茶)、リー(兼用)、キャン(コーヒー)、ボンド(デミタス)、ヴィクトリア(紅茶)、インペリアル(兼用)の6種類。このカップたちにも、由来があります。
★キャン(コーヒー、デミより一回り大きい)はトルココーヒー用として誕生し、当初はトルコへの輸出用でした。
★ピオニー(紅茶)は、アメリカ市場用に作られ、当初はアメリカ限定アイテムでした。
★タンカード(寸胴マグ)は当初、1クォート(1リットル弱)入るように作られた蓋つきの容器でした。
★リーは元々、紅茶カップでした。
Egyptian Collection1978
ジャスパーウェアの限定コレクションで、エジプトの壁画やスフィンクスをモチーフとした壷、フィギュリン、飾りプレート、ボックスなどを発表。カラー&レリーフ展開は大きく分けてブラックジャスパー&テラコッタ、テラコッタ&プリムローズ、ブラックバサルトに金彩モチーフの三種類。このボックスもコレクションなのでしょうか?
名前の由来1・コーヌコピア
ラテン語ではコーヌ(角)+コピア(豊富な)、ギリシャ神話ではゼウスに授乳したといわれるヤギの角を指す。
古来より豊かな作物、幸福の象徴とされ、ウェッジウッド社でもデメテルや農業の女神と果物・作物が描かれたヤギの角型(円錐形)の製品が作られていた。
ジャスパーウェア、全部で何色?
正規店で見るだけでも数色あるジャスパーウェア。一体何色存在するのでしょう?
ウェッジウッド社創立以来ジャスパーウェアは主力製品でもあり、創立者でありジャスパー生みの親でもあるジョサイア自身も夢中になった焼き物の一つでした。
その全色を公開!(ほとんどが廃盤ですが、現在も流通があるので全ての色を載せました。)
ブラック、バーベリーニ・ブラック、ブルー(ペールブルー、ダークブルー、マザリンブルー、ポートランドブルー、ロイヤルブルー)、ブラウン、ケーン、セラドン、クリムゾン、ピーチグリーン、グリーン、ティールグリーン、グレー、ライラック、ピンク、プリムローズ、トープ、テラコッタ、ターコイズ、ホワイト、イエロー。
ジャスパーウェア・ボツ写真集
当初はカラーパターン見本に撮りましたが、お遊び要素満載すぎてボツにしました(笑)
ただボツにするのはもったいないので、トリヴィアとして復活。

ボツ1 ボツ2 ボツ3 ボツ4

「グリフィン」とは何ぞ?
「フロレンティーン」や「コロンビア」シリーズに描かれ、またジャスパーウェアのモチーフと色々な場所に表現された伝説上の動物、グリフィン。
グリフィンとは一体、どんな動物だったのでしょうか?

★グリフィン(Griffin)またはグリフォン(Griffon),グリュプス(Gryphios) ★

名前の語源はギリシャ語のグリュプス(grups)「曲がったくちばし」という意味です。
(グリフィス、またはラテン語でグリュプスgryphiosとも呼ばれています)
ライオンの胴体に、鷲の頭、翼、前足を持つ伝説上の動物、通説ではギリシャ神話に登場する獣だとされています。
一方アジアに伝承したグリフィンもおり、中央のインドで生まれ西洋と東洋に伝播したのだという説もあります。

「黄金の番人」富と権力の象徴
グリフィンの巣は黄金でできていて、かつグリフィン自身がメノウの卵を産んでいたと言われており、それを守るために闖入者の人間に容赦なく襲い掛かったと伝えられています。
要するにグリフィンの存在する場所には黄金と宝石という「富」があったというわけです。
空の強者ワシと地の強者ライオンという姿はまさに強い「権力」の象徴、
このことからグリフィンは中世以降紋章に多く描かれるようになりました。
それ以前にも金などの産出場所には多く守護のしるしとしてグリフィンを描いていたそうです。

補足:ロンドンのシティ(中世当時から特権を有している独立自治区で、市庁であるギルドホールを本部とするギルド(同業組合)がある場所の呼称)の紋章にもグリフィンが用いられています。

ギリシャ神話でのグリフィン
ギリシャ神話ではゼウス(全能の神)、アポロン(太陽と芸術の神)、ネメシス(運の女神)の車を引いていたそうです。(グリフィンは優れた軍馬だったという)
酒の神ディオニュソスが飼っていたとも伝えられており、酒蔵の守護のしるしとして描かれることも多いとか。

キリスト教神学との意外なかかわり
聖書ではエデンの園の門番と書かれたりもしていますが、智天使ケルビムがこのグリフィンのような姿をしていたという説もあります。
中世の伝説では、聖地エルサレムの「グリフィンのツメ」は病を治す魔力があると信じられていたそうです。

補足:智天使・天使の階級について
神学者偽ディオニシオス・アレオパギテースの「天上位階論」(またはトマス・アクィナスの位階論)に基づくもので、キリスト教における天使は3つの階級(上級・中級・下級)に分けられています。
通常「天使」と言われるのは一番下の天使、聖母マリアに「受胎告知」をした天使ガブリエルはその一つ上の大天使に位置付けられます。それ以上は「人」とのかかわりがない天使なので、耳慣れないのは当たり前だと思います(笑)
このなかの「智天使」ケルビムがゼウスやアポロンの戦車を引いていたという説もあるそうで、ここから=グリフィン、とされたのか確証はありませんが・・・。
一つ上階級「熾天使」セラフィムも神学書では6枚の翼を持った半人半獣みたいな書かれ方をしていますし、およそ私達の想像する「天使」とはかけ離れたイメージです。
(もっと詳しく知りたい方は、トマス・アクィナスの「神学大全」に書かれています。)


おまけ・天使の階級表
階 級 名 前
第一階級(上級三隊)  熾天使(セラフィム) Seraphim
第二階級(上級三隊)  智天使(ケルビム) Cherubim
第三階級(上級三隊)  座天使(スローンズ) Thrones
第四階級(中級三隊)  主天使(ドミニオンズ) Dominions
第五階級(中級三隊)  力天使(ヴァーチュズ) Virtues
第六階級(中級三隊)  能天使(パワーズ) Powers
第七階級(下級三隊)  権天使(プリンシパリティーズ) Principalities
第八階級(下級三隊)  大天使(アークエンジェルス) Archangels
第九階級(下級三隊)  天使(エンジェルス) Angels

青の都、サマルカンド New!!
サマルカンドは「イスラーム世界の宝石」「青の都」「東方の真珠」など その美しさからさまざまな呼び名で広く知られています。
ウェッジウッド社がその素材とした「サマルカンド」について調べてみました。

★広辞苑から:
サマルカンド(Samarkand・撤馬児干)
ウズベキスタン共和国東部、中央アジア最古の都市。隋・唐時代の康国。
のちティムール帝国の首都。人口約40万人弱。
現在、ウズベキスタン共和国。2001年に世界遺産に登録されています。

ユネスコ公式ページ、概略より要約  サイトはこちら
サマルカンドの歴史的な町は「世界の文化の交差点」また「文化のるつぼ」と言えるでしょう。
紀元前7世紀にその基礎となるアフラシャブという街が作られ、
ティムール統治下の14世紀から15世紀にその最も重要な発展をしました。
代表的な建築はシャフィー・ズィンダ廟群、その中にはたくさんのモスクと神学校、
ビビ・ハヌーム・モスク、グル・エミール廟、ウルグ・ベグ天文台などがあります。

★サマルカンドの歴史概要
紀元前8世紀
アケメネス朝ペルシアの支配下、ソグド人の住むマラカンダという名の都市であり
この頃にはすでにシルクロードの中継地点として栄えていた。

紀元前4世紀
アレクサンドロス大王の軍隊が中央アジアに進出し、その統治下となる。
土着のアジア・ペルシャ文化とギリシャ文化が融合してヘレニズム文化が生み出された。

紀元前2世紀〜6世紀
商才のあった土着・ソグド人は支配国が次々と変わる中でもサマルカンドに繁栄をもたらす。
ササン朝ペルシアの文化、そしてソグド人の信仰である「ゾロアスター教」を東方に伝えた。
(この文化・信仰は日本にまで到達しています)

8世紀
アッバース朝による支配、急激なイスラム化。

13世紀
ホレズムシャー朝という当時最強のイスラム国家の首都であったが、
モンゴル帝国のチンギス・ハーンが侵攻。
その当時の激しい戦闘で、サマルカンドはその街のほとんどを破壊し尽くされる。

14世紀
ティムール帝国の支配始まり、その首都となる。
壮麗な建築物の造営に励んだ結果「イスラーム世界の宝石」と呼ばれる美しい都市になった。
今日サマルカンドの観光名所となるイスラム建造物のほとんどはこの時代のもの。

★史実からの考察
ウェッジウッドのサマルカンドC/Sを見てみると、全体にモスクを髣髴とさせるモザイク様の
模様がびっしりと描かれ、カップにはミニアチュール(細密画)のような鳥が描かれています。
この鳥、東洋人の私には「鳳凰」に見えるのですが、少し調べてみると全く違うようです。
サマルカンドの歴史から鑑みて「サエーナ鳥」というゾロアスター教の聖典「アヴェスター」に登場する
ワシなどのような霊鳥を描いているのではないかと思われます。

★なぜイスラム文化では「青」が多いのか?
サマルカンドの歴史的建造物にもペルシャン・ブルー、ターコイズブルーと呼ばれる美しい青が
たくさん使われており、他のイスラム都市にも青をモチーフとしたイスラム建築が見られます。
この理由はイスラム教において「青」または「緑」が聖なる色とされるからなのだそうです。
日本語では「青」「緑」と全然違う色になってしまいますが、青から緑への中間色、
それがペルシャン・ブルーまたはターコイズ・ブルーという色なのでしょう。
ウェッジウッドのサマルカンドもそれに倣って聖なる色、美しい青緑色をベースとしています。

追記
この資料を集めている間に同じウェッジウッドの「ボクハラ」についての記述も見つけたのですが
そのトリヴィアはまた次回にします。
同じくウズベキスタンに在しブハラ、ボハラとも呼ばれているようです。


原書 
「Wedgwood-The illustrated dictionary」 Robin Reilly著(絶版)
「British pottery & porcelain marks」 Geffrey A. Godden

参考文献
各出版社辞書、新共同訳聖書
「幻想世界の住人たち」新紀元社
「魂の神への道程」ボナヴェントラ 長倉久子訳
「神学大全」トマス・アクィナス

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