From Bankok with Love

Oct.2000

sec.1: 優しい思い出たち ガイドのお姉さん編

帰国してから今まで、まず一番に思い出すのがガイドのお姉さん。
おねえさんと言っても、よくよく話してみると同級生。しかも彼女、飛び級で大学を3年で卒業したという。
私と違ってかなり優秀。しかも、チェンマイ大学の日本語専攻で、日本語かなり堪能。
彼女の話す、あまりのきれいな日本語にてっきり留学経験でもあるのかと思いきや
大学で3年間学んだだけだという。やっぱり、学問に対する意識が基本的に違うのね。私たちとはね。
 同級ということがわかってから、ツアーのなかでも彼女とはよく話した。
私も英語を突っ込んでやっていたことがあるから、学んでいる言語を母国語とする人とコミニュケーション
することの楽しさ、難しさ、重要さが理解できる。彼女も日本語を話したがっていたし、
私は一目でタイに惹かれてしまったので、現地の大学生のこととか文化とか、とにかく何でも
知りたかったというのもあり、なんとなく意気投合。
 チェンマイ大学日本語学科で彼女が3年間学んでいたことは、まず日本語。会話と文法。
それから日本の文化と、生活習慣と、日本人の考え方(と、彼女が言っていた)が主らしい。
日本人の考え方ってどんなん?たとえば、私たちがアメリカ人はこうだ、とかいう会話をするのと同じ?
その後私は彼女に、演劇を専攻している、という話をした。タイにも伝統芸能と現代演劇、
日本の大学と同じように両方存在しているのだそうだ。バスでバンコク市内を走っているとき、
私たちが言う演劇の「立て看板」がたくさん乱立している学校があった。それはタイで一番レベルが高く
演劇が盛んな大学であると、彼女が教えてくれた。タイの早稲田?なんてね(笑)
国は違っても、同じなんだなあとメナム川を見ながらぼんやり私は考えていた。
 彼女は将来、お金をためて日本に行きたいという。しかし、日本に行くのはとても大変なことらしい。
なぜかというと、単純に言うとその貨幣価値。1バーツ、その当時2.5円。
私はこんな質問をしてみた。一月バンコクで一人暮らしをするには、どのくらいお金がかかるのか。
(彼女はチェンマイの実家を離れて、バンコクで一人暮らしをはじめたばかりだった。)
驚くなよ。なんと日本円で5万円あれば、家族四人が余裕で生活できるんだって。
ということは、いくら外資系とはいえ大学卒の給料なんてたかが知れている。彼女が日本にくるには
かなりの時間がかかるだろう。航空券だけでも3〜4万はかかるし、宿泊はユースでも2千円かかる。
1週間東京にいようと思ったら、全部で10万でもぎりぎりじゃないかな。4人家族の月収×2か月分。
ちょっと日本の感覚で考えてみてよ。すごい金額じゃない?婚約指輪買えちゃうよ。
生活レベルはそんなに大きな差があるとは感じなかったのに、貨幣価値、通貨の強さ、経済という名の
大きな壁が、私の国と、彼女の国の間に立ちはだかる。私たちは今、こんなに近い距離感覚なのに
なんだか、すごく理不尽な気がして。
 彼女が日本にくるのは、いつの日になるだろう。でも、きっと彼女はくる。東京にくる。
ここまで仲良くなったんだから、メールアドレスでも交換してくればよかったと思ったのだけれど
いつかまた、彼女に会える気がして。同じ地球っていう一個の惑星に浮かぶ私たちは。

 

sec.2: 傘とスリッパはタイ製に限る

 もう全く、タイトルのとおり。やっぱりね、激しいスコールの降る南の国ならでは。
ちょうど雨季と乾季の境目にバンコクに降り立った私は、初日から激しいスコール。そんなことを予想
しなかった私は、長い傘を持っていかず折りたたみ傘でびしょぬれ・・・。
止んだと思えば日差しが強くて日傘ほしい。でも、日本の晴雨兼用傘じゃ、スコールには耐えられない。
そんなとき、ガイドの彼女が持っていた傘が目にとまった。
彼女、雨でも晴れでも同じ傘。しかも折りたたみなのに、かなりデカイ。うう、あの傘ほしいよう。
早速彼女にその傘の出所を聞く。ぬわにぃ、伊○丹?あの、日本の伊○丹?
ちょっと高いけど、確実に晴雨兼用傘らしい。しかもアルミコーティングでUV100パーセントカット。
買う!絶対買う!なんとしても買う!と気合を入れて伊○丹に。
カラーも柄も結構色々選べて、広げてみるとでかいの。やっぱり。しかもかわいいし。というわけで
即買い。よ〜く見るとね、日本製だった(笑)日本でも売ってよ、伊○丹!
彼女いわく、日本人の持ってくる傘(折りたたみ傘)はなんであんなに「ちっちゃい」のかと常々
思っていたらしい。だって、そんな激しい雨ふらないもの!(笑)
 次。スリッパのお話。
タイに行く前から、スリッパ購入を予定していたわが母(笑)その理由は・・・
私が実家に戻ったとき、買い物に出た先の雑貨やでタイ製のわらで編んだ縫い目のないスリッパを
買ったとさ。いつも私が実家に帰ると、自分のスリッパがないんだもん。犬がどっかにやってしまったり
ほかの家族が履いてたり。しかも私はスリッパにうるさい。非常にうるさい。
なぜかというと、私は非常に汗っかきなのに加えて、ピアノ弾きなのである。つまり激しくピアノの
ペダルを踏んだり、夏であったり冬コタツに入っていたりすると、足にも当然汗をかく。
普通に市販されている布製ではすぐにへたってベタベタになってしまい、非常に気持ちわるいのだ。
今までは中敷がイグサのものか、わら製を好んでいた。しかし、これも中敷だけ。ほかは布製。
しかし!このタイ製のスリッパはすべてがわら。しかも縫い目がなく見た目も非常にナイス。
さすが暑い国のスリッパである。通気性も抜群、そのくせフィット感がまるでスポーツシューズのごとく。
おまけに、わら製はべたつかない!汗を吸収しかつ速乾性に優れたまさに「理想のスリッパ」。
最初はその見た目に引いていた母も、同じ悩みをもつ次兄も、たちまちとりこになった。
しかし、その店にはすでにこのスリッパはなく、幻の一品と化したのだった。
 そのときから母は、スリッパを買うことをひそかに心の中で決めていたのである。
さっそくバンコクそ○うに行って、雑貨コーナーをさぐる。アジア雑貨の店でよくみるようなココナッツの
食器とか、南国らしくバンブー製品とか、タイの焼き物とかの隙間に、ついに発見!!!
しかも安い。日本円に換算して、200円くらいか?それでもタイではめちゃくちゃ高い雑貨である。
母、即買い。大変お気に召していた。ちゃんちゃん。

 

sec.3: 丈夫な胃だけがとりえです

 さあ、タイといえばカレー。タイと言えばトムヤムクン。タイに行ったら、激辛料理食べなきゃ損損。
大学の横に某有名タイカレーのお店があって、入学当初から超弩級ハマリだったタイグリーンカレー。
本場で食べられるとあって、行く前から一人ヨダレをたらす毎日だった私。
ところがどっこい、母と母の友人とその家族総勢8人のうち私を除く7人はたちまち拒否反応。
海外旅行慣れしてない人はしょうがないとして、そうじゃない人って大抵二手に分かれるのね。
前者は、私のような机以外のものは何でも食べますよっていう中国人タイプ。後者は、においとかで
まず拒否反応しちゃって結局海外でまずい日本食とか食べてるタイプ。しかし私、実は大偏食。
けれどオーストラリアにステイしてたとき、言葉が満足に通じないからとにかく食べるしかなかったわけ。
出されたものを食べないと、おなかすくもん。生きてけないもん。人間、極限になればそうするしかないよ。
でも素直に食べてみると、現地の食べ物にも結構美味しいものとかあったりするのよ。
だから、出されたものはとりあえず食べてみようって言うのが私という人間ね。
ほかの人は、まずスパイスの匂いに負けて、独特のあのタイ料理の味に負けて、おまけに水のきれいな
ところに住んでるもんだから(伊豆ね)グラスの水にも負けちゃって、母を含めほぼ全員腹が・・・・
ところが、私だけは水ガンガン飲んで、三食たらふくタイ料理満喫(笑)体の調子、なんともなく。
肌も辛いものたくさん食べるものだから、つるつるぴかぴか。うっはっはー。どんなもんよ(爆)
後で聞いてみたところ、全員タイに行って暑さと食欲減退で痩せて帰ってきたんだって。
私はって?1週間で2キロ増。タイ人かおまえ!って総突っ込みを受けたのはいうまでもない。

 

sec.4: お母さまとお買い物

 最終日、待ちに待った自由行動の日。これを待ってたんだよー!あたしはね。
現地に行って、自分の足で動かないなんて損。海外旅行の醍醐味の半分以上を捨ててる。
何があっても自分の感性で足でその国の雰囲気と文化と環境と国民性と食べものをつかんでこそ。
というわけで、わが母と朝から買い物。スタバでモーニングコーヒーで一服して乗り込んだデパート。
でも、デパートはデパートでやっぱり現地のアッパー・クラスの人間とか外国人しかいないわけよ。
現地の庶民の生活が垣間見えるところに行きたいわけ。やっぱり。
 とりあえず日系はおさえとけってことでそ○うと伊○丹。日本とはだいぶ違う雰囲気。
まず雑貨。スリッパね。タイで売っている雑貨ってやっぱりバンコクのトレンドなのよ。それが日本には
似て非なるものは存在しても、基本的にないものだから欲しくて欲しくて仕方なかった食器たち。
あとベンジャロン焼きとセラドン焼きっていう、タイの焼き物。これもすばらしくエキゾティック。
蒼地に金なんて、日本人にはない感性じゃない?もう見るもの全部欲しくて。
 でも抑えられなかったものもあるんだな、これが。
何を隠そう、調理用品。日本人って手先が器用だからなんでも自分の手でやろうとするじゃない。
けど、外国では必ずしもそうでないのね。白人文化圏に行くと、こんな簡単なの?
っていうようなものがたくさん売ってるよ。ちなみに。というわけで、私はフライ用トング
(でかいはさみ型で、安定感が非常によい。)と、肉たたきを購入。
これ二つで150円くらいかな?ちょうどセールだったから。そして母は・・・。というと(笑)
なべ購入。は?なべ?と思う方も多いと思いますが、鍋。ほうろう製。海外に出てやれメジャーだ、
スパゲティトングだって色々買ってきてる私も、鍋買った人は初めて見た。ていうか実の母だってば。
この親にしてこの子ありである。さすが生みの親は違う。子供も手を出さなかった領域に足を
踏み入れているあたり、さすが私の親である。「ちょっと煮物するのにも便利なのよねー」と涼しい顔。
お値段、200円くらいだったかな?でかいほうろう鍋が。まー激安だけどね、確かに(笑)
 そんなこんなで、最大の魅惑スポット、食料品スーパーだ!
タイ料理大好きの私は、調味料やスパイスを買い込む。日本だと300円くらいするナンプラー、現地で
なんと30円。関税いくらなわけ?これってさあ。と思いつつ、乾麺(トムヤムめん、汁そば、お米のそば、
牛肉めんなど多数)とか見た目がおもしろい、タイ語が書かれたタイの駄菓子?とかを買い込む。
でかいカートを押しながら、これが安いだこれが美味しそうだと二人で食料品を買い込む私たち。
もはや、観光客ではない(笑)立派な在タイの邦人である。生活感たっぷり。
ホテルに帰るころには、食料品となべであっぷあっぷの私たち親子。
その晩の酒の肴になったのは、言うまでもありません。きゃははは。(開き直り)

 

sec.4: 悠久のメナム・リバー

 タイに行く前から、ずっと見たいみたいと思っていたメナム川。
この川がタイの食料・米作、文化、経済を支えてきたと言っても過言ではないメナム・リバー。
ホテルを川沿いのロケーションに設定して、毎日メナム三昧な日々。ああ、ホテルはリバーサイド♪
高層ホテルの窓からは、メナム川が一望。朝は川沿いのテラスでバイキング。うー、タイだー!
川沿いということは、ただでさえ蒸し暑いバンコクにさらに湿度が加えられるというわけでみなさんは
とても暑そうであったのだが(爆)私は一人、メナム満喫。
 朝起きると、DAWNなメナムにはうっすらと霧がかかっている。タイ人は朝が早い。モーニングコールは
普通に6時半である。朝食も6時から7時半までに食べないと、食いっぱぐれる。
暑くて湿度が高いため体力の消耗は思ったより激しい。それに見合うだけの朝食を摂らなくては、
バンコクの一日は消化できない。しかしいかんせん、私が6時半起きなんて奇跡・・・(笑)
 母にたたき起こされ、窓の外を見て濃霧のメナムを見下ろすことで私の朝は始まる。
着替えてテラスに降りてゆくと、7時にしてすでにむせ返るような暑さ。慣れると、これがまたタイらしくて
非常に心地いい。パンケーキにメイプルシロップをたっぷりかけて、フルーツにオレンジジュース。
わざと日のあたるデッキ部分の席を選べば、メナムの川面が私に迫ってくる。対岸には、通勤の船。
 メナムには橋がない。代わりに船の停泊所が無数にある。カヌーの先を尖らせたようなモーターの
小船にたくさんの人を乗せて、船は底なしのメナムを横切る。
底の浅い小船は懸命にメナムの水をかきわけようとするが、悠久の大河はそんなことには動じない。
時としてしぶきをあげ、蹴散らされながら船は進む。そんな毎日の風景を見ながら摂る朝食は、
たまらなくアジア的な混沌のパワーエネルギーと南国特有の快い朝のけだるさを私に運んでくる。
東京には、日本にはもはや存在しない人々の、空気の、空の、養分を含んだ川の水の熱さ。
熱い空気の中に溶けてしまいそうなコーヒーを食後に飲んでしまうと、バンコクでの一日がはじまる。
 そして疲れて戻ってきた私を迎えてくれるのは、やはり母なるメナムなのである。
「おかえり」とでも言いたげな川面は、なぜか女性的なのだ。夕暮れのメナムには、朝とは逆方向に
船が横切ってゆく。遠い目で空を見上げるとグラデーションを描いて、父なる太陽が眠りにつく。
最後の輝きを放つ寸前の一瞬が、バンコク市内を光と闇のコントラストに浮かび上がらせる。
そんなレビューを見ながら飲むシンハ・ビールはこの上なく美味しい。そうして、私の長い一日は終わる。

 

to be continued... 

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