ミサ固有文:復活祭のミサより
(例にあげた言葉はすべて復活祭の主日のもの)

Introitus(固有文)

固有文の最初の祈り。主にその日のミサの方向性を位置付ける。
イントロイトスはアンティフォナ(交唱)、プサルモディア(詩篇唱)、ドクソロジア
(栄唱)の3つの部分からなり、先唱者と聖歌隊が交互に歌う。
プサルモディアとドクソロジアは必ず同じ旋律で歌う。この旋律は数個の型があって、
それぞれのミサのイントロイトスで決定される。ドクソロジアを歌った後、
冒頭のアンティフォナに戻りプサルモディアの前で終わる。
ここより先に固有文の例として、復活祭のミサにおける歌詞を挙げることとする。

【復活祭ミサの入祭唱】

(アンティフォナ)
Resurrexi,et adhuc tecum sum,alleluia:

posuisti super me manum tuam,alleluia
mirabilis facta est scientia tua,alleluia,alleluia.

(プサルモディア)
Domine,probasti me et cognovisti me,
tu cognovisti sessionem meum,
et resurrectionem meam.

(ドクソロジア)
Gloria Patri et Filio et Spiritui Sancto.
Sicut erat in principio,et nunc,et semper.
Et in saecula saeculorum. Amen.

(アンティフォナ)
私はよみがえった、もはや永久に御身とともにある、アレルヤ。

御身は私の上に御手をおきたもうた、アレルヤ。
御身の知識は妙なるものである、アレルヤ、アレルヤ。

(プサルモディア)
主よ、御身は私を試み、私を探りたもうた。
主は私の休みと復活をよみしたもうた。

(ドクソロジア)
願わくは父と子と聖霊に栄えあらんことを。

はじめにありしごとく、今もいつも世々に至るまで、アーメン。

 挨拶

 司祭は入場してくるとすぐに祭壇に上がって
「父と子と聖霊の御名によって、アーメン」
といいながら、右手で額と胸に十字架のしるしをする。

 

 集会祈願(固有文)

 グローリアが終わると司祭は“Dominus vobis cum”(主は皆さんとともに)
と会衆に挨拶し、会衆は“
Et cum spiritu tuo”(またあなたの霊とともに)と答える。
この挨拶は固有文の前に、ミサの各所で行われる。
ついで司祭は祈りましょう、といって集会祈願を読みだす。
この祈りは司祭が朗読するもので、聖歌隊も歌わない。

 

 第1朗読(旧約聖書、固有文)

 初代教会の伝統にのっとり、
第2ヴァティカン公会議以降に再び設けられたもの。

 

 第2朗読(使徒書簡、固有文)

 聖パウロや聖ペテロなどイエスの弟子が
各地のキリスト教会に宛てて書いた手紙。司祭が朗読する。

 

 AllelujaまたはTractus

 「アレルヤ」とはヘブライ語で神を賛美する言葉である。
もともとは復活祭から聖霊降臨祭までの日曜と昇天祭には
グラドゥアーレがなく2つの異なったアレルヤ唱を唱えていた。
待降節、四旬節、死者ミサではアレルヤのかわりにトラクトゥスが歌われた。

 

Alleluia,Alleluia
Pascha nostrum immolatus Christus.

Alleluia.

アレルヤ、アレルヤ。
われらの過ぎ越しの子羊、キリストはいけにえとなりたもうた。

アレルヤ。

 

 続唱(固有文)

 グレゴリオ聖歌の旋律によるアレルヤ唱はキリエと同じように、
一音節に多数の音符を配し、高度にメリスマティック
(言葉1音節に対し複数の音)なのが特徴である。
そのアレルヤという言葉の母音の部分に、詩篇の詩句が
シラビック(言葉1音節に対し1つの音)にに付随して
全く新しい曲が作られた。それがこのセクエンツィアである。
一度はトレント公会議で全面禁止になる予定であったが、
以下の5つだけが典礼の中でそのままに残された。

ヴィクティメ・パスカリ・ラウデス(復活のいけにえに)
ヴェニ・サンクテ・スピリトゥス(聖霊きたりたまえ)
ラウダ・シオン(シオンよ汝の救い主をたたえよ)
ディエス・イレ(怒りの日)
スターバト・マーテル(悲しみの聖母)

復活祭
聖霊降臨祭
聖体の祝日
死者ミサ
聖母マリアの7つの苦しみ

【復活祭の続唱】

Victimae paschali laudes immolent Christiani.
Agnus redemit oves:
Christus innocens Patri reconciliavit peccatores.
Mors et vita derllo conflixere mirando:
dux vitae mortuus regnat vivus.
Dic,nobis Maria,quid vidisti in via?
Seplucrum Christi viventis:
et gloriam vidi resurgentis.
Angelicos testes,sudarium et vestes.
Surrexit Christus,spes mea:
praecedet suos in Galilaeam.

Scimus Christum surrexisse a mortuisvere:
Victor Rex,Miserere.Amen.Alleluia.

キリストの信者たちよ、復活のいけにえに賞賛をささげよ。
子羊は羊をあがない、
罪なきキリストは、罪人を御父となごませた。
死と生命とは、不思議な戦いを行い、
生命の造り主が死にたもうた。

しかし見よ、今や生きて述べたもう。
マリアよ、われらに告げよ。道で何を見たかを。
「生けるキリストの墓とよみがえりたもうた
御者の栄光とを私は見た。
その証人なる天使、布と服を私は見た。」
我が希望なるキリストはよみがえりたもうた。
ガリラヤで汝を待ちたもう。
我らはキリストがまことに死からよみがえりたまうのを知る。
勝利の王よ、われらをあわれみたまえ。アーメン、アレルヤ。

 

 福音朗読(固有文)

 福音書とは、4人の福音史家マタイ、マルコ、ルカ、ヨハネによって書かれた
キリストの事跡を伝える新約聖書の1箇所である。

 

共同祈願(固有文)

ここでは会衆が種種の意向のために、声を合わせて祈る。

 

 Offertorium(奉納・固有文)

 ここからはミサの核をなす部分に移行する。
司祭はここで、ミサにおいて最重要個所である聖体の祭儀のために用いる
パンとぶどう酒を祭壇にささげる。このあいだにオッフェルトリウムが歌われる。
これは固有文であり、先唱者が歌いだした後に聖歌隊が続く、
アンティフォナの形式をとるのが普通である。

 

Terra tremuit,et qui evit,dum resurgeret in judicio Deus,Alleluia.

神が審判のために立ちたもうたとき、地は震え、音をひそめた、アレルヤ。

 

 

 奉納の祈り(固有文)

 司祭はパンとぶどう酒を祭壇にささげた後水で手を清め、
ミサの核である「聖体祭儀」に備える。

 

 奉献文(固有文)a.叙唱

 司祭と会衆との間で交わされる「主は皆さんとともに」「また司祭とともに」
に始まる短い掛け合いの後に、司祭は「奉献文」を朗読。

 

 Communio(拝領、固有文)

 アニュス・デイの後、ミサは聖体拝領になる。
聖体とは前述したようにキリストの体となったパンであるが、
それを会衆が司祭から受けることである。
この聖体拝領の前に唱えるのがコムニオである。

 

Pascha nostrum:immolatus est Christus,alleluia:
itaque epulemur in azymis sinceritatis et veritatis,
alleluia,alleluia,alleluia.

われらの過ぎ越しなるキリストは、いけにえとなりたもうた、アレルヤ。
ゆえに、
この祝いを真実な清い種無しパンを持って祝おう。
アレルヤ、アレルヤ、アレルヤ。

 

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