「死刑宣告」 萩原恭次郎

大学時代、荒川洋治という現代詩人のゼミにいました。
このゼミは凄く質が高いのに、なぜか文学部で冷遇されていて、
おまけに学生には当時「超楽勝ゼミ」で通っていました。
先生はラジオのDJもやっているだけあって、話のテンポもよくて質も高い良いゼミなのだけど・・・。
そのゼミで一番印象に残った詩が、この萩原恭次郎という一般の人にはほとんど知られていない
天才詩人の、「日比谷」という詩。 
この人はわりと左よりの詩を書く人。デカダンス万歳!
と思ったら前書きに「デカダンスじゃねぇんだよ」と書いてありました。すみません。
この「死刑宣告」という詩集は、そのレイアウト上、今でも印刷には大変な時間と手間がかかるらしい。
実物が見せられないのが残念。レイアウトも含めて「作品」なんだけど。(できる限り復元します)

 

「日比谷」

強烈な四角
     鎖と鉄火と術策
   軍隊と貴金と勲章と名誉
高く 高く 高く 高く 高く 高く聳える
 首都中央地点―日比谷

屈折した空間
   無限の陥穽と埋没
   新しい智識使役人夫の墓地

高く 高く 高く 高く 高く より高く より高く
  高い建築と建築の暗闇
    殺戮と虐使と噛争

高く 高く 高く 高く 高く 高く 高く
  動く 動く 動く 動く 動く 動く 動く
日 比 谷 

彼 は 行 く―
彼 は 行 く―
    凡てを前方に
彼の手には彼自身の鍵
   虚無な笑ひ
   刺戟的な貨幣の踊り
く―

黙々と―墓場―永劫の埋没へ
最後の舞踏と美酒
頂點と焦點
高く 高く 高く 高く 高く 高く 高く聳える尖塔

彼 は 行 く  一人!
彼 は 行 く  一人!
日 比 谷

 

戻る