立山・黒部アルペンルート

★日程
1日目:自宅〜宇奈月・トロッコ列車で鐘釣往復・富山市泊
2日目:富山市〜アルペンルートで信濃大町へ〜長野新幹線・東京(築地)泊
3日目:銀座でお買い物・帰宅

★第二の故郷黒部

大学時代にお世話になってから、毎年夏は必ず黒部に行く。(旅行記参照)
見慣れた海とは違う日本海、天高い空にどこまでも続く田園風景、 背後にはそびえたつ立山連峰。
東京に住んでいたときは実家への望郷の思いを感じ、
実家に戻ってからも心やすらぐ温かい土地。
1泊2日のあわただしいツアーとは言え、
また大好きな土地と大好きな人々に会えるかもしれないという期待。
一度訪れてみたかった、という両親を伴い黒部に。

★いざ、富山県

今回はツアーの集合が東京駅で、必然的に朝は早い。
夜が明けぬ時間に目を覚まして東京に向かう。
新幹線で長岡まで行き、そこから宇奈月まではバス。
(このバスが越後交通(笑)真紀子ネットワーク恐るべし。)
いつも黒部に行く時はは湯沢まで新幹線で行き、そこから特急か
高速夜行バスで一直線。今回は足して2で割ったコース、どちらにしてもおなじみ。
バスが高速黒部ICで下りると、本当に懐かしい風景が目の前に迫ってくる。
今年は夏に激しく体調を崩し、黒部には来られなかったため
まさに1年ぶりの黒部・・・宇奈月まで行かなくていいから、私だけここで下ろして〜!
と車窓に消えていくYKKの工場を見ながら(←地元ネタ)
一人考えておりました。

宇奈月は2年ぶり。
前回はトロッコ列車で黒薙まで行き、そこで温泉宿に1泊しました。
TVもない静かな清流の横で濃い空気と冷たい水、大自然の中で温泉に浸かり
とりとめもなく色々な話をした夜。
そんなやわらかな思い出を心にひとつひとつ浮かべながら、
冬の寒さを予感させる空気の中トロッコに乗りこむ。
あの時はチケットが無くて仕方なく(?)窓のついたちょっぴり豪華な車両に乗り
(夏で暑かったから、本当は窓なしに乗りたかったのです。)
今回は寒いから窓付きに乗りたかったのに、大人数のツアーだから窓なしで震える羽目に(笑)
トロッコとはどうもタイミングが合わないのね・・・。
どちらにしてもトロッコ列車とは名ばかり、TDRのカリブの海賊、
あれを連想していただければばっちりOKの遊園地的乗り物です。

あか〜い火を噴くあの山へ〜♪のぼろう〜♪
という「フニクリフニクラ」がぴったりの細い線路をとことこと列車は行く。
線路の両側は深い川と谷、初冬の日差しが山の黄、緑、赤の彩色に映える。
夏は深い蒼色をしていた川は、今やセルリアンブルーに変化していた。
後で黒部の知人宅で聞いたのだけれど、前日まではあまり天候がよくなく
快晴ともいえる天気になったこの日は今の時期に珍しいほどの好天だったという。
そうよ私は晴れ女。またはいつも脳天気だからかなー。(意味違う・・・)
しかし完全防備の真冬仕様で乗ったにもかかわらず、窓なしはやっぱり寒い!
懐かしい黒薙駅につくころは自慢の筋金入り末端冷え性の手は凍りそうに・・・。

★鐘釣温泉で考えさせられたこと

今回は鐘釣で散策の時間があり、ここは温泉の他に何も無い。
黒薙もそうだけど。
前回黒薙に宿泊した時、鐘釣の迷惑な観光客の話を聞いたことを
私はすっかり忘れていた。
元々黒薙も鐘釣も川べりに温泉の露天風呂があり、日帰り入浴も宿泊もできる。
黒薙の場合は大人数が一挙にいけるほどの道も場所も無いので
大挙して人が押し寄せることは無い。
しかし、鐘釣は違う。
きちんと整備された遊歩道、長い階段を下りると広い河原にたどり着く。
元々は宿泊客と日帰り入浴客のために作られた川べりの露天風呂に
いつしか入浴をしないツアー客の団体が押し寄せるようになったのだそうだ。
高い場所から階段で降りてくるのだから、当然露天風呂は上から丸見え。
男性はともかく、女性は日中入浴なんて楽しめる訳がない。
実際に場所に行ってみて、そんなわけのわからない団体に入ってしまっていた自分が
とたんに情けなくなってしまった。
(近所の河津七滝にも同じような風呂があり、気持ちがよくわかるのだ。)
今回のツアーでも上から覗けないように作ってある女性風呂を
わざわざ興味本位で覗きに行った人もいたくらいなので
どれだけ入浴客が迷惑しているかは想像に難くないです。
知ってか知らずか幸いにもその日は入浴客がなく、
私は露天風呂からかなり離れた場所で一人川べりで温泉を掘り
足湯を堪能しながら山の写真を撮ってました。

★時間よ、止まれ

日が落ちかけたころ、再びトロッコ列車で宇奈月駅に戻る。
たっぷりひざ下から浸かっていた足湯のせいか、一人汗をかくバカな私・・・
宇奈月駅からは再びあの越後交通で本日の宿、富山市内のホテルへと向かう。
本当ならばこの後夕食バイキングと温泉なのだけれど
私は一人別行動の予定。
というより、宇奈月で別れればよかった・・・と後で果てしなく後悔。
毎年イベントのスタッフとしてお盆は黒部市に来ており
そこでいつもお世話になっている方とこの後お会いするのです。
だって宇奈月と富山市に来たんだから、これは会いに行くでしょう。
土地も、食べ物も、人も、そして劇場もみんな大好きだもん♪
バスが富山市のホテルに着くと速攻でタクシーを呼び駅に飛ぶ。
駅まで車で5分のはずが、10分以上もかかってしまい
列車にはぎりぎり。息弾ませて飛び乗るともう疲れが一気にでてぐったり。
富山駅から黒部駅までは30分、その間心はわくわく。
駅までお迎えに来ていただき、いざ常宿へ。(って普通の民家。知人宅。)
毎年イベントが終了した日にここのお宅にお邪魔して
激務の本番終了後、過労がピークのここの主に手料理まで作ってもらい
ハイエナのような速さでそれを平らげ、さらに酒までかっくらい
挙句の果てに仮寝の宿を提供してもらっているという図々しさ全開の私(笑)
ぬしの手料理はそれほど美味しいのだ・・・
偶然にもなぜか私の好きではないメニューばかりが出てきて
それが驚くほど美味しく、来るたびに好きなものが増え
そして次から次へ食べて飲んで体重も増える・・ここは悪魔の館(ウソです・・爆)
今回も私の好きな料理を作ってくださった上に
「黒部の名店」シリーズと称して美味しいモノばかりが並びました。
時間は短かったけれど、1年ぶりにみんなに会って話すことができて
なんだか故郷に帰ってきたような感じ。
ところが・・・
終電で富山駅まで帰るはずが、まんまと楽しい時にはめられ乗り遅れ
さらに図々しいことに富山市まで車で送ってもらいました。

★立山黒部アルペンルート(オフィシャルサイト

たらふく美味しいご飯を食べて夜半に帰ってきた私。
気が付くと部屋に両親はおらず、予想通り朝食を食べそびれた模様。
そのままバスに乗り、本日は旅のメイン・立山黒部アルペンルートへ。
立山駅への途中お土産屋さんに寄ると、懐かしい言葉が飛び交っている。
微妙な違いはあるのだろうけれど富山弁。
昨日もみんなが楽しそうに話すのは富山弁、聞くだけなら理解できる。
初めて来た年はタクシーの運転手ともコミュニケーションが取れなくて困ったけど
それだけ年数が経ったんだな、と改めて実感。

立山駅からはケーブルカー、まだこの辺りは昨日の宇奈月と同じく紅葉が美しい。
山の斜面と同じ斜めのケーブルカーってなんだか不思議な感覚。
まだ標高が低いから、のんびり高い場所から見る紅葉を楽しみつつ美女平に。
美女平から室堂まではバス。ここで一気に1000メートル上がります。
すでに美女平に着いたときは耳が痛く(飛行機の着陸時と同じ痛み)
困ったなあ、と思うまもなく私は爆睡してました。
(夜半に帰ってきた上、昨日の疲れ爆発)

というわけでやむなく割愛・・・・・・・・・・・

気が付くとすでに室堂は目の前、もうあたりは一面雪。
道の片側に物干し竿のような長い棒が等間隔で刺さっている。いや、立てられている。
それはあの有名な雪の壁、春になったとき数メートルの雪の中で
道を判別するために立てられているのだという。
目覚めていきなり迫るのは立山連峰、小一時間の眠りで頭もすっきり耳もすっきり。

★室堂にて
室堂では昼食と散策でたっぷり時間があり、早速一杯引っ掛けて歩き出す。
(11月中は甘酒のサービスがあるのです)
天候も実によく晴れ上がっていて、酒で温まった体は歩いていると汗が出てくる。
室堂のターミナルからみくりが池、みどりが池を経由して一周する観光ルートである。
みくりが池に映る連峰の山並みはすでに雪化粧。
ちょうど池のほとりに木のベンチがあったので昼食。
本当は下界より薄いはずの空気は澄み切って濃く、水はどこまでも透明で甘く
自然を汚すことしかできぬ人間の存在を痛いほど思い知る。
でもそんな人間がいたから私はこの地に立てたのだ、と思うとそのジレンマに涙が出そう。

日本の山はメンタルの大きさが好き。
海外の山はスケールの大きさが好き。

そんなステキな話をとりとめもなくした思い出をここで一人実感してみる。
雪に刺しておいた紙パック緑茶はすっきりと冷えて美味しい。

一休みが終わるとみどりが池を見ながら元のターミナルに戻る。
みどりが池は半分凍り、うっすら雪がつもって幻想的。
人が触れられぬ自然はなんて美しいんだろう。
私はほんのちょっとだけ拝ませてもらってるだけだ。
自然信仰を持つ人々の「自然へのおそれ」がわかるような気がする。
ここに存在するだけでカメラのシャッターを押そうとする手すら震えるのだから。
けれどその気持ちとは逆に高い太陽から、周りを囲む立山連峰から
何とも言えぬスピリチュアルな力を得ているような気がする。
行き着くところはやっぱり自然信仰か・・・・

一周した後ホテルのラウンジでコーヒー好きの私はセオリーとして
名物立山連峰の水で淹れたダッチコーヒーを飲んだ。
我が家で飲んでいる天城山麓の湧水は硬水なので、いつも苦いコーヒーなのだけれど
ここの水はとろりと甘い水なので苦味が少なく酸味もやわらかい。
普段美味しいコーヒーを飲んでいる私も「むむ、おぬしなかなかやるな」状態でした。

★大観峰
トロリーバスで到着後建物の屋上で山並みを見る。
山々は美しいけれど、先ほどの散策で心に受け止めた感情が多すぎて
ほとんど見た記憶が無い。
ただここ以降必ずどこの駅にも土産屋とセットで日本酒の試飲&販売があり
乗換えをするたびに日本酒好きな私はひたすら酒をかっくらっておりました。
酒の味は思い出せるんだけどなあ・・・・ここは濁り酒が美味しかった(笑)

★黒部平
ここくらいまでは晴れない限り結構寒いです。室堂と同じ服装で大丈夫。
大観峰から支柱なしロープウェイで一直線なんだけど、私は絶景が見たいと
競争率の高い前を狙わずに一番後ろの一番見晴らしの良い場所をキープ。
しかし、待っていたのは怖〜い体験でした。
照明をやってた頃から微妙になんちゃって高所恐怖症ではあったのですが
某劇場のキャットウォークに上って一気に症状が悪化したのです。
それが数百メートルも下るロープウェイ、しかも逆向きに…
ひぃぃーーーーーーーー!!!
と声こそあげなかったもののむちゃくちゃ怖かったです(自業自得)
黒部平庭園なるものがあるというわけで見に行ってみましたが、
雪が降る季節なので全滅。しゃーない、また酒の試飲でもするか。

★黒部湖・黒部ダム
黒部湖駅まではまた斜面になったケーブルカー。
今度は雪深い場所なので暗いトンネルのなかをひたすら下ります。
散々ロープウェイで怖い思いをしたあとだというのに、
またもや今度は一番前に乗ってしまいました…合掌。
トロッコのときも思ったんだけど、遊園地のジェットコースターね。
あんな感じで降りてくの。途中大人の都合でがちゃん!とか微妙にストップされると
次はシャーッ!!!と落下して行きそうな感じで非常に怖い。
と思ってるのは私だけ。多分おそらくきっと。

黒部湖駅につくといよいよダムです。
放水は10月で終了しているので、縁を歩くだけ。
両親は200段からの階段の上にある展望台に行くといって去り、
私はラウンジでコーヒーを飲む。
多分展望台から見る景色は美しいにちがいないのだろうけれど
この辺まで来てもまだ室堂で見た連峰の印象をひきずっておりました。
一瞬にして身も心も奪われて支配されてしまったのだから。
そのままとりとめもなく早い夕陽をぼんやりと眺める。

★扇沢〜信濃大町〜都内

再びトロリーバスで扇沢に下り、そこからはバス。
ここらにくると標高差のせいもあり疲れも出たのか、また耳が痛くなる。
ああ下界に降りてきちゃったのね。しかも「信濃の国」。
ここから長野駅まで行って長野新幹線で東京駅まで。
実を言うとこのあたり本当に記憶がないです。
かっくらった酒で寝てたのか?
物思いに耽ってたのか?
次に意識が戻ったのは長野駅で夕食を取るべく街に出たとき。
懐かしい「真澄」の大きな広告。久しぶりの信濃だよー。
帰りの電車でさらに日本酒を飲もうかと真澄を探すが、大瓶しかなくあきらめる。
(飲んでばっかりじゃん)
さらに気づくと更なる下界も下界、東京駅でした。

(3日目はツアーでないので、割愛します。)

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